おっさんの音楽の楽しみ方―RADWIMPS『いいんですか? 2017 ver.』
よくYoutubeで、最近のいろんな音楽を聴いている。「あ、これあの曲のあのメロディに似ているな」とか「この歌い方はあの人に似ているな」と思うことが、年齢を重ねるに連れて多くなってきている。
自分と同世代ならば、この歌い方を聞いてケツメイシを思い浮かべない人はまずいないし、2番からは三木道山や湘南乃風っぽくなる。そしてサビはGOING UNDER GROUNDっぽい。別にそれはそれで悪くないのだけど、Youtubeのコメント欄にそういうことが全く書かれておらず、全肯定されているのを見るとモヤッとする。
これがおっさんの面倒くさいところで、何かが良いという場合にも別の何かが頭に浮かんで、それとの比較で褒めなければいけない、という自制が働く。だから「いいものはいい」とは素直に言えなくなってしまう。
この曲はとても良い曲だとは思うのだが、オリジナリティは無い。面倒くさいおっさんの私はそう思う。
back number『ハッピーエンド』に期待する2017/01/20の『MUSIC STATION 2時間SP』事前レビュー
2017/01/20の『MUSIC STATION 2時間SP』で披露される曲の一言レビューをしてみた。
レビュー
INABA / SALAS『AISHI-AISARE』new
MVも曲も驚くほど退屈。B'zや稲葉浩二のファンは喰いつくだろうけど、一般の人に届くほどの訴求力は無い。
KinKi Kids『薄荷キャンディー』(03)
スローなバラード風の曲。雰囲気は良いが、そこまで特徴のある曲ではない。2000年代前半だとふたりともそこそこ歌唱力があるので、今どこまで歌えるのかが見どころ。
KinKi Kids『もう君以外愛せない』(00)
有名な『夏の王様』のカップリング曲。カップリングの割には良いメロディ、よい歌詞だと思う。
グリーンボーイズ『キセキ』new
GReeeeNのカバー曲。この曲調が今流行るかは疑問。
グリーンボーイズ『声』new
GReeeeNのカバー曲。オレンジレンジとケツメイシをミックスしたような曲。切ないメロディとポジティブな歌詞。『キセキ』同様、尖ったものがない。
西野カナ『Dear Bride』(16)
2016年の紅白で歌っていた曲。結婚ソング。PVの西野カナが奇跡的にかわいい。
西野カナ『トリセツ』(15)
2015年の紅白で唄っていた曲。結婚ソング。PVの西野カナが奇跡的にかわいい。
back number『ハッピーエンド』(16)期待
優しい良い声をしていると思う。系統としてはレミオロメンに近いのだが、それとはまた違った魅力がある。PVはチオビタとかのCMっぽくて良い感じ。
舞祭組『道しるべ』new
CDTVのライブを見たけど、よく分からない。あんまり歌はうまくないし。歌も笑いを狙ってる感じだけどそこまで面白くもない。
ブルーノ・マーズ『24K Magic』(16)
PV見たけど、日本とは金のかけ方が違う。成金ぽさを全面に出したファッションで確かにダサいんだけど、同時にかっこよくも見えるのは黒人の特権なのか。
ブルーノ・マーズ『Treasure』(13)
『サタデー・ナイトフィーバー』の時代を思わせるような曲。歌い方がマイケル・ジャクソンっぽい。
まとめ
今回の一番期待しているのはback numberの『ハッピーエンド』。ボーカルの声が良い。次点でブルーノ・マーズ。安定したパフォーマンスが期待できる。
嘘松はどこへ向かっているのか
盛った創作実話をツイートしてお互い突っ込まない特定クラスタの名称について既に「嘘松」という名称がついているという知見を得ました。個人的には別のクラスタと関連させすぎな気もするんですが、調べたら既に広まってる言葉みたいですね。
— 尾野(しっぽ) (@tail_y) 2017年1月3日
最初期は嘘か本当か分からないような、創作臭のするBL関連の発言をtwitter上でつぶやいた人が「嘘松」と呼ばれていた。最近は事情が変わってきたように思う。いまはもっとフランクに、そして曖昧に、「嘘松」という言葉が使われ始めている。
嘘松という名称は、もちろんアニメ『おそ松さん』のタイトルに引っ掛けたもので、そういった作品を愛好する腐女子たちをバカにする意図があったということは間違いない。
それは普段、腐女子という存在に違和感を持っている人たちにとって、とても便利な言葉だったのだと思う。なぜなら創作実話ツイートを嘘松と結びつけることで、腐女子=嘘つきというレッテルを貼れるからだ。そういった腐女子への反感や悪意が、ここまで嘘松という言葉を一般的なものにした。
ただ一般化が進んだ結果、発言の主体が腐女子であることや、BLに関係するという要素は重視されなくなってきていて、蔑称的な意味合いは徐々に薄まってきているようにも見える。
もしかしたら今は過渡期で、将来的には、嘘松という言葉からは腐女子やBLに関連する要素は一切消えて、単にtwitter上の創作実話ぐらいの意味合いになるのかもしれない。
ただ一方で、創作実話が腐女子によって今後もツイートされ続けるということはほぼ断言できる。自分の観測範囲の話で申し訳ないのだが、それくらい腐女子の自己顕示欲は並大抵のものではないのだ。
バカにする人にこそ聞いてほしいMr.Childrenの『雨のち晴れ』
ミスチル(Mr.Children)と言えば、好きだと言えば馬鹿にされるグループの代表格みたいな存在だけど、彼らの曲に限って言えば、私はそういう馬鹿にされるタイプの曲の方が好きだ。高尚なものなど求めていないので、ファストフードみたいに「旨い!安い!早い!」曲を提供し続けてくれればそれでいい。だけど、ある時期からのミスチルはそういう曲を全然作歌ってくれなくなったので悲しい。
ミスチルの中でどの曲が一番好き?と聞かれても、自分でも把握してないのでちゃんと答えられないのだが、『雨のち晴れ』という曲は間違いなく5本の指に入るくらいに気に入っている。とは言っても、この曲、『終わりなき旅』や『名もなき詩』なんかに比べると、全然有名じゃない。でも、ファストフードっぽさが非常に強くてそこに魅かれている。
『雨のち晴れ』
90年代のトレンディ・ドラマをそのまま一つの曲にしてみました、という感じの物語性の強い曲だ。あるいは久保ミツロウのマンガにありそうなスト―リーと言ってもいい。現在のミスチルもそうだけど、こういう歌詞の曲って全然聞かなくなった。20代・30代男性労働者のために作られた曲っていうのが、最近はほとんどない。
それはもしかしたら、よく言われている女性の社会進出やなんかで、そういったニーズの中心が男性から女性に移ったからなのかもしれない。確かに、最近のテレビドラマは女性を主人公にしたものが多く、しかも高視聴率を取っている気がする。
まぁ、それは置いといて、肝心の歌詞の内容だけど、この歌詞は地味に凝っている。まず1番、2番、3番とあるのだけど、この中に複数の時制があって、最近のことを話してたと思ったら急に昔の話になったりして、これが映画でいうフラッシュバックみたいに効果的に作用している。では、1番から順に時制に注目して追っていこう。
1番の歌詞
単調な生活を繰り返すだけ~
(略)
~部屋でナイターを見よう
主人公は現在の日常生活を「単調」だと言っているが、その状態を肯定しつつある。親友との約束をキャンセルして、部屋でナイターを見るくらい人間関係に対して疎かだ。
あの娘が出て行ったのはもう3か月前~
(略)
~あれほど燃え上がってたふたりが嘘みたい
3か月前、同居していた彼女と別れたが、そのことについて強い感情は湧かなかった。昔あれほど愛し合っていたのが信じられないほどだ。
最近じゃグラマーな娘にめっぽう弱い~
(略)
~まるで手ごたえがない
最近、女性の好みが変わったらしく、グラマーな娘が好きだ。(3か月前別れた彼女はグラマーでは無かった?)新人のマリちゃんはグラマーだが先輩の自分が言い寄ってもまるでなびく気配はない。
不景気のあおり受けて社内のムードは~
(略)
~いっそ可憐に咲きほころうかと思うよ
最近は世の中は不景気で、他のみんながピリピリしている分、新人に言い寄るくらいお気楽な僕の存在だけが車内で浮いてる。上司に愚痴言われるくらいが花だというので、愚痴を言われ続けても耐え続けるつもりだ。
もうちょっと 頑張ってみるから~
(略)
~今日は雨の日でもいつの日にか
今日は雨(悪い状態)でも、いつか晴れる日が来るかもしれないので、もうちょっと頑張ってみようと思う。
2番の歌詞
お前って「暗い奴」そう言われてる~
(略)
~2羽のインコを飼う
幼少の頃からずっと「暗い奴」って言われている。今、ダイニングとキッチン(もう料理を作ってくれるあの娘はいない…)のある狛江(23区外)のアパートには、出ていったあの娘の代わりに2羽(つがい)のインコを飼っている。
たまに実家に帰れば、真面目な顔して~
(略)
なるべくいい娘を探したいって思っちゃいるけど
(現在)たまに実家にに帰ると、母親に「孫の顔が見たい」みたいなことを言われる。普通、こういうことを言われるのは嫌なものだけど、(最近は)その気持ちが分かるようになってきた。
もうちょっと 僕を信じてみて
(略)
イメージはいつの日でも雨のち晴れ
現実がどうであれ、自分の頭の中にはいつでも、雨のち晴れ(物事が良い方向に進む)のイメージがある。
3番の歌詞
優秀な人材と勘違いされ~
(略)
~頭を下げていた
(入社した当初)優秀な人材と勘違いされたことで、人間関係で酷い目に逢った。(今ではその勘違いは解消されたということ?)
若さで乗り切れるのは~
(略)
~誰も分からない
(入社してから今までは)若さで乗り切ってきたけど、それも今年まで。この先(将来)どうなるかなんて誰も分からない。
その日暮らし 楽しく生きりゃ~
(略)
また日が暮れる
その日が楽しけりゃそれでもいいのかもしれないと、そんなことを考えはするのだけど、なにもできずに毎日が過ぎていく。
もういいや 疲れ果てちまった
(略)
今日は雨ふりでも いつの日にか
疲れたとは言いながらこれまでもやってきた。今日は雨でもいつかは変わるかもしれない。
もうちょっと 頑張ってみるから
(略)
イメージはいつでも雨のち晴れ
いつの日にか 虹を渡ろう
頭の中では良くなるイメージがあるので、もうちょっと頑張ってみる。いつの日にか、虹を渡るぐらいにうまく物事が進むだろう。
まとめ
ここまで読んできて、なんとなく分かったと思うが、この曲の歌詞はある種の自己啓発みたいな内容を含んでいる。今は悪い状態かもしれないけど、ポジティブに、自分を肯定して生きていけば、きっと良いことがあるよ!、みたいなことを歌っているのだ。だから、この曲を嫌う人がいる気持ちも分かる。私もそういう歌は嫌いだ。
だけど、この歌にはリアリティがあるので、そういったうさん臭いものと一定の距離を置くことに成功していると私は思う。つまりメッセージをただ単に歌詞として書き連ねるのではなく、そこにテレビドラマのように明確な輪郭を持った登場人物を出演させることで、メッセージに説得力をもたせ、軽薄さを感じさせないようにしているのだ。これが90年代のミスチルが成功した大きな理由だと思う。
問題は2000年代後半以降のミスチルからは、ほとんどこういった魅力が消え失せてしまっていることだ。その結果、自己啓発的なうさん臭さや説教臭さだけが残ってしまった。このことが個人的には悲しい。ポジティブなことをひたすら吐いてるだけじゃ、そこに説得力が生まれないので、曲はどんどん空虚なものになる。
この点に関してミスチルに期待するのはもう無駄な気がする。一時期のポルノグラフィティがそういう曲を作っていたが、彼らももう旬は過ぎた感がある。だから実質的には今男性の労働歌、それもある程度ポップでロマンチックなものを歌える人はいない。ここにぴったりフィットする人が現れれば、めちゃくちゃ売れると思うんですが、いかがでしょうか?
追記
労働歌でググったらこのサイトにたどり着いたんですけど、確かに『「恋するフォーチュンクッキー』は、女性目線であるものの、素晴らしい労働歌だと言えますね。
音楽関連のエントリー
【活動休止】いきものがかりに無関心だった立場からの代表曲レビュー
いきものがかりが活動休止する。そう言われてもなんの感慨も湧かない。それくらい、いきものがかりについては、その存在を知った時から一貫して無関心だった。私にとって、こういう音楽グループは珍しい。なぜなら、自分は、音楽の好き嫌いがそれなりにはっきりしているので、曲を聴いたうえで中立的な立場をとり続けるということがまずないからである。ところが、彼女の歌を聴いても、あるいはグループのビジュアルを見ても、すごく好きとか嫌いとかそういう感情が一切起こらない。これはある意味すごいことだと思う。
無関心とは言っても、いきものがかりの曲をまったく聞いてこなかったわけじゃない。CMやドラマの主題歌として、いろんな種類の曲をなんども聞いてきた。そのうえで、繰り返し聞こうと思った曲が一度も無かった。こういうといきものがかりのファンに怒られそうだが、本当のことである。ただ、何気なく聞いていて、一時的に良いという曲はあったので、今日はその曲をYoutubeで探しながら、アレコレ書いていきたいと思う。
曲はいきものがかりのシングル売上ランキングから、売上が多い順に10曲。具体的には以下の通り。
10位『ふたり』
9位『SAKURA』
8位『帰りたくなったよ』
7位『ハルウタ』
6位『キミがいる』
5位『歩いていこう』
4位『風が吹いている』
3位『ブルーバード』
2位『YELL/JOYFULL』
1位『ありがとう』
いきものがかりのシングル売上ランキング | ORICON STYLEより
いきものがかりの代表曲レビュー10
10位『ふたり』(2009)
悲しい感じのメロディの曲。「ぼくら」という歌詞があるけど、別に男目線の曲とかではなく、漠然と恋愛の歌なんだろうと分かる程度。そこまでメロディはキャッチ―ではない。今まで一度も耳にしたことが無い曲だと思うが、たとえ過去に聞いていたとしても全然覚えていないだろうなぁ。そういうタイプの曲。
タイアップ TBSテレビ系ドラマ「ぼくの妹」主題歌
9位『SAKURA』(2006)
メロディが切ない感じで美しい。まさにCMにぴったりの曲だと思う。歌詞には、離れ離れになった男女のエピソードを女性である「あたし」の側から描いたものである。しかし、それが失恋を意味するのかは具体的には述べられておらず、「桜舞い散る」という言葉からなんとなく想像できるのみである。「失恋ソング」あるいは「失恋からの立ち直りソング」の方が違いと思うが、卒業ソングに解釈できないこともない。
個人的には、キレイな曲だとは思うが、女性の立場からの歌ということもあるし、繊細すぎるということもあるので心の底からグッと来るものがないので、繰り返し聞きたいとは思わないけど、CMとかで流れていたら良い曲だなぁとは思う。
タイアップ:NTT「DENPO115」CMソング
8位『帰りたくなったよ』(2008)
この曲はタイトルを聞いただけで、「♪帰りたくなったよ 君が待つ街へ」というサブ部分の歌詞とメロディが頭に浮かぶ。そういうわけで売り上げのかなり上位に位置しているかと思っていたのだが、8位というのは意外だった。学校の教科書とかに乗ってもおかしくないような内容の歌詞だと思う。よく言えば普遍性があるとも言えるし、悪く言えば漠然としていてつまらない。
タイアップ:『アイフルホーム』CMソング
7位『ハルウタ』(2012)
勢いのある曲。劇場版名探偵コナンの主題歌として使われたということで、切ない感じはあるけど、基本的に明るい雰囲気。ただ尖ったものはないので、「コナン」とのタイアップが無ければここまで売れていなかった気もする。
タイアップ:東宝配給アニメ映画「名探偵コナン 11人目のストライカー」主題歌
6位『キミがいる』(2010)
いままで聞いたことがなかったけど、めちゃくちゃいい曲だと思った。10位から7位まで順に聞いていて、メロディの中に全部「切ない」感じがあったのだけど、この曲にはまったくそういうのが無い。恋に恋する女の子の感情をそのままにメロディと歌詞に込めましたという感じ。アニメ化した少女マンガの主題歌にぴったりな曲だと思ったが、実際はドラマ版『ホタルノヒカリ』の主題歌とのこと。
タイアップ:NTV系ドラマ「ホタルノヒカリ2」主題歌
5位『歩いていこう』(2011)
スローで切ない感じの曲。「応援ソング」的な要素がある。Aメロ、Bメロは他の曲に比べてちょっと重めで、サビも抑え気味。感動系の映像作品のエンディングとして流れると良いかも。
タイアップ:TBSテレビ系ドラマ「ランナウェイ~愛する君のために」主題歌
4位『風が吹いている』(2012)
NHKロンドンオリンピック・パラリンピックのテーマソングだというが、まさにそういう感じの曲。基本的に前向きで、盛り上がるタイプの曲。ダイジェスト映像の背後でかかっている感じの、主張の強すぎない歌詞とキャッチ―過ぎないメロディ。どこかで聞いたことがあったとしても、絶対に覚えていないタイプの曲だと思うが、オリンピックとNHKが絡んでいるだけあって、売上は良かったみたいだ。
タイアップ:NHKテレビ「ロンドン放送」テーマ・ソング
3位『ブルー・バード』(2008)
アップテンポでノリはいいが、切なく悲しい曲調の曲。これもスポーツイベントでも使われているのかと思ったがwikipediaによるとテレビアニメ『NARUTO』の主題歌だったとのことである。歌詞は抽象的で、神話のよう。
タイアップ:TX系アニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」オープニング・テーマ
2位『YELL』(2009)
暗く不安な感じのイントロから始まって、サビにかけて盛り上がるタイプの曲。曲の構成が非常にうまい。2009年度NHK全国学校音楽コンクール中学校の部課題曲として制作されたとのこと。名曲だと思う。
1位『ありがとう』(2010)
この曲も曲のタイトルを聞いただけでメロディと歌詞が浮かぶ。サビ以外は結構平凡だけど、ライブで歌ったら盛り上げるだろうなぁと思う。
番外編『1 2 3 ~恋がはじまる』(2013)
個人的に、いきものがかりと聞いてまず一番初めに頭に浮かぶ曲。ただWikipediaによると売り上げは酷かったらしい。
オリコンチャートでは、2008年リリースの「帰りたくなったよ」以来16作ぶりに初動売上が2万枚を下回り、累計も2007年リリースの「うるわしきひと/青春のとびら」以来20作ぶりに3万枚を下回った。
カルピスのCMとして繰り返しテレビで流れていて、非常に印象に残ったのだが、売り上げには貢献しなかったらしい。
まとめ
今回聞き直してみて良い曲が多いと思ったのだが、繰り返しじっくり聞くタイプではない、という印象は変わらなかった。メロディも歌詞も声質も、学校の教科書に載っていそうな感じで、毒にも薬にもならないようなところが好きになれなかったのだと思う。
でも、ライプで見てみるとまた違った魅力があって、それが見られなくなるのは正直寂しい。これから、音楽活動を続けるのかわからないが、ソロでまた違った曲風で聞けるのなら、今度はもっと好きになれるかもしれないので、楽しみに待ちたい。
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これまでに書いた音楽関連のエントリー
伊集院光の指摘するNHKのダメな部分に一番忠実だった椎名林檎の2016紅白パフォーマンス
2016年の紅白に出場した椎名林檎に関しては、曲発表前にが歌う曲を予想したり、曲が発表されてからはその選曲に対する疑問を書いたりしていた。そして目的の紅白を実際に見ても、そういった疑問は解消されず、「地味、つまらない」ぐらいのざっくりした感想しか湧いてこなかった。だけど、ホットエントリー入りしている他ブログの記事を読んで、もうちょっと深く考察してみようと思って、この記事を書くことにした。
該当記事は次のリンクから読める。
この記事で言わんとしてることはなんとなく分かるけど、この文章を読んだところであのパフォーマンスについての私の否定的な評価は覆りそうにもない。
NHKらしくない番組が作りたい?
今回のパフォーマンスの何がダメかっていうのは、伊集院光がラジオの中で全部言ってくれている。簡単に言うと、椎名林檎は「NHKらしくない番組が作りたいんです」っていうNHK側の要求に一番忠実に応えてしまっていると感じるからだ。それゆえ私は今回の椎名林檎については全く評価していない。
次の文章は伊集院光がラジオの中で、今年の紅白について語った内容である。
紅白見ないんで今年がどうだとか分かんないんですけど、僕NHKで仕事をするにあたって一番嫌いな言葉ってのがあって、NHK内で発せられる一番嫌いな言葉は、「私、NHKらしくない番組が作りたいんですよ」っていう言葉で、それを聞くと、もうその時点ですげぇやる気がなくなるっていう(笑)
こっち側としては、NHKらしくない番組をやりたいなら、NHKじゃないところで仕事をしてるので、そっち(他局)でいいですと思うわけ。こっちはNHKを尊敬してるし大好きだから、NHKから番組のオファーが来るから嬉しくてそれをやるわけで。
それを「NHKらしくない番組をやりたいんです」っていう「ブッ飛んだ、面白いことがやりたいんですよ!」っていう匂いが超する紅白だった!(笑)
「タモさんが観客席にたどり着かないって超面白いでしょ?」っていう(笑)「マツコとタモさんがNHKの愚痴を言いながら、結果着かないって普通NHKじゃ絶対にやらないでしょ?」って匂いが、ある意味NHKのスベるケースの一番中央にあるんじゃねぇかって思うんですよ。
ゴジラなんかも、「NHKのアナウンサーさんが本当にゴジラが来ちゃってるみたいな感じでドタバタするのってNHKの発想じゃないでしょ?」っていうNHKの発想だから(笑)
(「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ)1月2日放送分より)
NHKの「NHKらしさ」を捨てて勝負している、というアピールに一番貢献していたのが他でもない椎名林檎であった。顰蹙を買うか買わないかのギリギリを攻めていると思わせるには十分だけど、一線だけは絶対に超えない。そういう安全に踏み外す感じが、今回のパフォーマンスでは際立っていた思う。
文脈は読めるけど、適度に外すこともできるよ。オリンピック閉会式の引継ぎ式という一大イベントを終えた直後だから、そういうイメージを作りたい椎名林檎とNHKの思惑が合致したということだろうけど、それって視聴者を置いてきぼりにしてない?という印象はぬぐえない。
椎名林檎のいちファンから見ると、重すぎる荷物を背負おうとしているように、あるいは背負わされているように見えるので、「本当にその方向に進むのは正しいの?」と心配になるのだが、それはこっちの都合なので、ぐちぐち言っても仕方ないのかもしれない。
ただ、こっちの都合をさらに言わせてもらえるならば、昨年、一昨年の紅白で披露したぐらいの、ものすごくポップなものと尖った部分が同居している、意識高めのパフォーマンスをする人たち、ぐらいの世間から評価がちょうどいいような気がする。
国民的ーという形容詞がロクなものでないことは、昨年一年間で十分証明されたと思うので、それをわざわざ引き受ける必要などないのでは?と個人的には思う。
音楽関係のエントリー
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) の『 助演男優賞』のコレじゃない感について
フリースタイルダンジョンなどで活躍するR-指定とその相方のDJ松永のユニット、、Creepy NutsのMVについては、過去2作品は非常に楽しく見させてもらったのだけど、今回の新曲のMVは乗れないなぁと感じてしまった。
新曲『助演男優賞』のMVはYoutubeで公開されているので誰でも見ることができる。
このMVを見て、素晴らしいと感じる人もいると思う。実際、一流のスタッフを集め、知恵を振り絞り、それなりの金と労力をかけた結果なのだろう。だが、それでもやはり、このMVについては手放しに褒められない何かがあると感じたので、その理由についてアレコレ考えてみた。
Creepy Nutsの過去のMVを振り返る
今回のMV『 助演男優賞』について検証する前にまず、過去のCreepy NutsのMVについて振り返りたい。こちらもYoutubeで見ることができる。
『みんなちがって、みんないい。』
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / みんなちがって、みんないい。【MV】 - YouTube
『みんなちがって、みんないい。』は、ラッパーを取り巻く状況を揶揄したMVである。このYoutubeを初めてみた時は、若いのにこんな感性を持っているラッパーがいるのかと、心底驚かされたものだ。
このMVの何がそんなに優れているのかというと、第一にこの曲には絶対的なオリジナリティーがある。ラップ業界の内幕という一部の人間しか知りえないことをネタに、彼らなりの解釈を加えて描いているので、他人には決して真似できないMVに仕上がっている。
第二にこのMVが優れているのは、コアなラップファンとラップについて全く知識が無いような層のどちらにも届く内容になっていることである。例えば『みんなちがって、みんないい。』では、ファンモンという紅白出場経験もあるようなグループと、呂布カルマのようなニッチなラップファンにしか分からないラッパーをどちらも取り上げている。だから、間口が広く、かつ奥が深い曲に仕上がっている。
第三に単純にMVとして面白い。R-指定には、ラッパーを形態模写するセンスがあるし、歌詞に関してもストレートに他のラッパーを批判するのではなく、彼らが置かれている状況について考えさせるような構造の曲になっている。
以上のような点で私は『みんなちがって、みんないい。』は良いと思った。
『合法的トビ方ノススメ』
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / 合法的トビ方ノススメ 【MV】 Clean Ver. - YouTube
続く『合法的トビ方ノススメ』にに関しても好意的に受け取っていて、コレは歌詞の内容の方は大したことは無くて、要約すると「クスリよりも音楽の方が楽しいよね」とか「音楽こそが自分たちにとっての最高のドラッグなんだ」みたいなことを言ってる。それ自体は凡庸なんだけど、MVの出来とトラックが非常によく出来ていて、女子高生がドラッグや援交に手を染めようとしているシーンとR-指定とDJ松永がその場に現れて歌い踊るシーンとで構成されているのだが、前者のシーンの質が非常に高い。これは解説するまでもなく見てもらうのが一番早いだろう。
そういうわけで、『みんなちがって、みんないい。』、『合法的トビ方ノススメ』について振り返ったので、問題の『助演男優賞』について語っていく。
『助演男優賞』
このMVが他の2つのMVと大きく違う所は、物語性が強いということだ。簡単にストーリーを追っていくと、まずうだつが上がらないCreepy Nutsの前に、敏腕女性プロデューサーが現れ、イケメン二人を彼らの代役にしたうえで、様々なメディア戦略を駆使してプロモーション活動を展開する。その結果、Creepy Nutsは絶大な人気を獲得する。もちろん本物のR-指定とDJ松永は代役の陰に隠れて辛酸を舐めることに。しかし代役の二人のスキャンダルが発覚したことで、人気は一気に凋落し、本物のCreepy Nutsはその責任を取らされ、所属する会社を追い出される、というものである。
まず、このストーリーが滅茶苦茶つまらないのが致命的である。最終的に代役が失敗するという何のひねりも無い、勧善懲悪的な展開になっており、「え!?結局この結末なの?」という残尿感ばかり残る。
そして、扱っている題材も芸能人の不倫や薬物問題といった、俗なものばかりで、彼ら自身の視点が全く反映されていないことも問題だ。芸能人のスキャンダルをこき下ろすことなら一般人でもできるわけで、わざわざ彼らがそのレベルに降りてきて、MVを見る人間の留飲を下げさせる必要などあるだろうか。ここには、『みんなちがって、みんないい。』にあるようなオリジナリティがないのである。
そのうえトラックにも、過去2作品に感じられたようなこだわりが感じられない。このMVでは、トラックがストーリを語るための道具のような扱いで、トラックそれ自体の魅力が決定的に欠けている。
まとめ
そういうわけで、私はこのCreepy Nutsの新曲『 助演男優賞』のMVに対して「コレジャナイ…」と思ってしまうわけだ。結局、私がCreepy Nutsに感じていた魅力というものは、一部の人間にしか分からないハイコンテクストなものと、誰ても分かるローコンテクストなものを一つの曲の中に両立させるセンスの良さ、これに魅かれていたわけである。
でも、今回の『 助演男優賞』のMVは、大衆的なもの、ローコンテクストなものばかり目立って、ハイコンテクストなものがすっかり消え失せているように感じられる。それは結局、『みんなちがって、みんないい。』で彼らが揶揄していたファンモン(FUNKY MONKEY BABYS)的な感性に非常に近いと思うのだが、そのことについてCreepy Nutsの2人はどれだけ自覚的なのか。
ネタ切れということもあると思うし、もっと一般受けするものを作りたいという考えもあるのかもしれないが、『助演男優賞』みたいな曲なら、別に他のアーティストが作ってもいいわけで、個人的には過去2作ほどの魅力を感じないというのが私の結論である。
で、ここまで書いておいてなんだけど、Creepy Nutsを見限ったとかそういうことでは全然ない。期待値が高いからこその批判なわけで、彼らには『みんなちがって、みんないい。』と『合法的トビ方ノススメ』を超える作品が作れるだけのポテンシャルがあることは間違いない。だから、安易に「あるある的感性」に訴えるのではなく、「なんだか自分にはよく分からない。だけど凄い!」と思わせるような作品を作ってほしい。私が望むのはそれだけである。
音楽関係について語った記事