行政書士は独学で合格できるか―平成27年度行政書士試験を受験して

 結論から言うと行政書士試験を独学で合格するのは難しいと思う。なぜなら行政書士のテキスト類は独学できるような親切な作りになっていないからだ。公務員のテキストと比較してもらえれば分かりやすいと思うが、公務員試験のテキストはたいてい問題集と教科書がセットになっていて、一冊でひとつの分野が学べるようになっている。具体的にはこの2つの過去問のシリーズが良い例である。

 

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 憲法

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 憲法

 

 

公務員試験 出るとこ過去問 憲法 セレクト100 (公務員試験 過去問セレクトシリーズ)

公務員試験 出るとこ過去問 憲法 セレクト100 (公務員試験 過去問セレクトシリーズ)

 

  『新スーパー過去問ゼミ』シリーズと『公務員試験出るとこ過去問』シリーズは、両方とも要点整理と過去問、解説が一体になっていて、これ以外に教科書を必要としない。加えて、要点整理には判例が掲載されているし、試験に出題されやすいポイントはしっかりまとめてある。このように公務員試験は独学で学習できる参考書が多く出版されており、予備校に頼る必要はほとんどない(予備校は面接対策やモチベーション維持には有効だと思う)。

 一方、行政書士の場合はどうかというと、基礎テキストと基礎問題集が別の冊子として販売されており、そのためなのか基本問題集の解説が不十分で独学向きではない。例えばtacの場合は以下のようである。

 

行政書士 合格テキスト 2015年度 (行政書士 一発合格シリーズ)

行政書士 合格テキスト 2015年度 (行政書士 一発合格シリーズ)

 

 

行政書士 過去&厳選問題集 2015年度 (行政書士 一発合格シリーズ)

行政書士 過去&厳選問題集 2015年度 (行政書士 一発合格シリーズ)

 

  このように基礎テキストと基礎問題集が別の本となっており、基礎問題集には基礎テキストの対応したページが記入されている。しかし、ひとつの設問の中に複数の参照ページが記入されていることもあり、なかなか対応している部分を探すのが難しいし面倒である。正直テキストと問題集が別々になっているというのは、公務員試験の問題集に慣れている立場からするとありえない。

 なぜこんな不親切な作りになっているのかというと、恐らくは基礎問題集を解説した動画を購入してもらうためなのだろう。

www.youtube.com

 

 tacは講師がわざわざ解説しなければ理解できないような問題集をは販売しているということになる。まったく感心できないが、予備校も生き残るのに必死なのだから仕方のない部分はあると思う。

 行政書士の書籍を扱う会社はだいたい予備校も運営しているので、こういうことが起こってしまうのだろう。とはいえ前述の『公務員試験出るとこ過去問』シリーズはtacから出版されており、tacに完結した問題集を作るノウハウが無いわけでは無いだろうが。

 以上のように、独学に適したテキストが販売されていないため、行政書士試験に独学でチャレンジするのは難しい。それでも、あえて独学でチャレンジしたいという人には 『公務員試験出るとこ過去問』シリーズなどの公務員試験用のテキストで一度基礎的な部分をマスターすることをお勧めする。