日韓外交における地雷回避戦略における有効性(仮)

 韓国人の立場からすれば、韓国の戦略はしっぺ返し戦略ということになる。しっぺ返し戦略と言うのは、いわば「やられたらやり返す」戦略のことである。プレイヤーは自分からは裏切らないが、相手が裏切ったら自分もその次の手番で裏切るというのが、しっぺ返し戦略の内容である。

 一方日本の戦略は、信頼戦略と言うことになるだろう。日本の場合は、海外からの評判を重視しているので、決して自分からは裏切らないし、裏切られても寛容な態度で臨むのが得だと考えているのである。

 しかし、このような戦略の選択は、あくまで主観的なものであり、逆の立場から見ればまったく違った戦略を取っているようにも映るので注意が必要だ。たとえば靖国参拝などは国内的には、韓国に対する裏切り行為では無いが、韓国の立場からすれば重大な裏切り行為として映る。

 一方で、韓国からみた裏切り行為に対する日本への報復は、日本人にとってはあまりに不相応なものとして映っている。たとえば前大統領の竹島上陸や天皇への謝罪要求は日本人にとってはあまりに過剰な報復として理解されている。日本人から見れば韓国の取っている戦略は、しっぺ返し戦略と言うよりも2倍返し戦略に近い。

 以上をまとめると次のような図になる。

[日本側からの視点]

(O=協調、X=非協調)

日本の選択→OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO

韓国の選択→OOOOXXOOOOOOOOXXOOOOOOOOOXXOOOO

 

日本側からすれば、日本側の行動はすべて韓国に対して協調的なものであるが、韓国からすれば日本の何気ない行動が韓国に対する裏切りに見えてしまっている。韓国はそれに対して報復を行っているのだが、その報復が日本側からすれば過剰なものに見えている。

 

[韓国側からの視点]

(O=協調、X=非協調)

日本の選択→OOOOXOOOOOOOOOXOOOOOOOOOOXOOOOO

韓国の選択→OOOOOXOOOOOOOOOXOOOOOOOOOOXOOOO

 

韓国側から見れば、日本人は突発的に自分を裏切る危ない奴ということになる。それに対する報復は、韓国人にとって正当なものとして理解されている。

 

まとめ

 日本人と韓国人の相互不信は、外交的戦略の違いだけに原因があるのではなく、戦略の主観的な見え方の違いにも原因がある。しかしこれに対する建設的な解決手段の提示は困難である。なぜなら日本人には、自らのどのような行動が韓国の報復対象になるのかが、事前に分からないからである。日本人にとってあまりに当たり前な行動、たとえば旭日旗の掲揚や特定の神社への参拝は、韓国人にとっては侮辱として認識される可能性がある。そして、それは韓国政府によって恣意的にコントロールすることも可能だ。私たちにできることは、何が報復対象となる行為なのかを、鋭敏に察知して、地雷を踏まないようにすることだけである。いわば地雷回避戦略による協調によって、ロスを抑えることが対韓国における最適な戦略なのではないだろうか、中には、それを屈辱的なものとして考える者もいるかもしれない。しかし多国間の外交ゲームという視点から考えれば、韓国に対する地雷回避戦略は、上品さによって評判を維持する比較的有効な戦略と言えるのではないだろうか。