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田中誠監督『雨の町』(2006)は安田顕と成海璃子に注目しよう

 久しぶりに見つけたホラー系映画の良作。ただ、ホラー的要素は薄く、さほど怖くはないので、ホラー嫌いも安心して見られる。その代わり、ミステリー、サスペンス映画的な要素が強いのと、冒頭にちょっとばかし性的に過激なシーンがあるので苦手な人は注意が必要かもしれない(とは言ってもほんのちょっとだけど…)。

 

 どこかの映画レビューで「日本版ペットセメタリー」と書かれていたが、ストーリーはまさにそんな感じである。ただ本家ペットセメタリーよりも、もっとシンプルな物語構造なので、自分はちょっと(脚本的に)薄いかなと感じてしまった。

 

 特に真木よう子が演じる役場職員のヒロインは、たいして過去の掘り下げもされず、また映画内の事件ともほとんど絡まず、主人公とくっつくので、ご都合主義的な登場人物に見えてしまうのが残念だ。

 

 あとはゾンビ的な子どもたちの造形、例えば攻撃手段なんかももうちょっと工夫できたんじゃないかと思う。とにかく、設定とか脚本が甘い映画だという印象を持った。

 

 一方で演出面はほとんど文句がつけようがないほど素晴らしい。役者の演技や、照明、ロケーションとどれをとってもプロの仕事だと思う。

 

 役者の中では、冒頭の安田顕が見事にハマっていた。正直安田顕のこんなにうまい演技を見たのは初めてだった。かなり個性的な医者の役を演じているのだがまったく違和感が無いのである。

 

 他には出演時間は短いものの、光石研や役場の男性職員たちも良い味を出していた。この田中誠という映画監督の作品は、大昔に鳥肌実の『タナカヒロシのすべて』を見て以来だけど、役者の動かし方が素晴らしいという印象を持った。

 

 この映画の一番キーとなる役柄は成海璃子で、この成海璃子と主人公の関係の微妙さ、曖昧な描き方がこの映画の一番の核になっているように見えた。この映画は、この時代の成海璃子の素晴らしさを再確認するというだけでも見る価値のある映画だと思う。

 

 この映画は95分とかなり上映時間は短いのだが、「100分切る割に、こんなに内容が濃い」というタイプの作品ではなく、ストーリー的には比較的淡白なのだが、見終わった後に後を引くというか、映画が終わってから何度も噛み締めたくなるような、そういう作品だと思う。

 

雨の町 デラックス版 [DVD]

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