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行政主導で文化は生み出せるのか?八戸ブックセンターの試みと問題点

社会問題

 2016年12月4日に青森県八戸市で八戸ブックセンターという施設がオープンした。この、露骨に八重洲ブックセンターパクった意識したような名前を持つこの書店の最大の特徴は、その運営主体が八戸市という自治体だということである。

hachinohe.keizai.biz

運営コンセプト

公式HP(八戸ブックセンター)によると、この施設の運営コンセプトは

八戸に「本好き」を増やし

八戸を「本のまち」にするための

あたらしい「本のある暮らしの拠点」

 とのことである。

方針

具体的には

方針1 本を「読む人」を増やす

方針2 本を「書く人」を増やす

方針3 本で「まち」を盛り上げる

という3つの方針がある。

企画・イベント

実際にやっていることは

①セレクトブックストア
②カンヅメブース
③読書会ルーム

の3つが主のようだ。その内容は

①専門家がおすすめの本をチョイスしてポップなどをつけて並べる

②作家になりたい人が創作活動に集中できるためのスペースを提供する

③ブックセンター主催、または市民の依頼によって読書会を開催する

ということだ。

感想

 率直に言って、なぜ地方自治体がこのような施設の運営に税金を投入しなければならないのか分からない。既存の図書館や教育機関ではダメなのか。民間ではその役目を果たせないのか。現状では、そういった必要性への疑問にうまく応えられていないように見える。

 実際に行っていることを見ても、①のセレクトブックストアは普通、民間の書店が通常業務の一環としてやっていることだ。②に関して、作家活動に公の支援が必要だという話も聞かないし、支援したからと言って作家がぼこぼこ生まれるわけじゃないだろう。③のいわゆる「読み聞かせ」に関しては、普通自治体の図書館がやっていることで、わざわざここでやらなきゃいけない理由はない。

 つまり、現状を見る限りでは、八戸ブックセンターを「公」が運営しなければならないような道理はどこにもないのである。

  一方で、この手の施設が必要な理由は痛いほど理解できる。なぜなら八戸には他の都市と比較して、文化資源が圧倒的に足りていないからだ。つまり八戸市は文化的に非常に貧しい都市だからである。

文化的に貧しい都市、八戸の特徴

八戸市が文化的に貧しい理由はいくつかある

  1. 県庁所在地ではない
  2. 歴史的な積み重ねが少ない
  3. 公立大学が存在しない
  4. 大型書店が存在しない

なぜ、八戸は文化的に貧しいのか。それは近隣の都市(青森、弘前、盛岡)と比較してみればよくわかる。

①県庁所在地ではない

 まず基本的なところから始めると、八戸は県庁所在地ではない。青森県の県庁所在地は、もちろん青森市である。だから県の主要な機関は青森市に集中していて、国の地方機関も少ない。加えて、テレビ局が無いのもでかい。

②歴史的な積み重ねが少ない

 弘前津軽藩の城下町として有名な一方、八戸も八戸藩という藩の城下町であったが、その規模は小さく、弘前城のような有名な史跡も残っていない。歴史的な有名人も太宰治などを産んだ旧津軽藩の地域よりも格が落ちる。

公立大学が存在しない

 若者がいないから、新しい文化が生まれる余地が無いし、大学が無いから専門書の売り上げも少ない。あと大学図書館のような施設が優秀な司書を雇うことによって得られる恩恵も受けられない。

④大型書店が存在しない

 ジュンク堂丸善のような大型書店が存在しないので、専門書を購入する必要性があってもAmazonなどを使って取り寄せることが必要になる。

 

 以上4つの理由から、八戸は文化的に貧しい都市となっている。文化資源の貧しい都市からは若者が逃げていく。若者が逃げていく都市は今後衰退していくのみである。だから文化的に豊かな都市を目指すという方針は圧倒的に正しい

 だが八戸ブックセンターのやり方を見ても、その方法が目的にどれだけ貢献しているかを考えると否定的に語らざるを得ない。結局この方法では文化は生まれないだろう。

 

文化的に豊かな都市を作る方法

 実現可能性を無視して、私が文化的に豊かな都市を作る方法を考えると以下のようになる。

公立大学を作る

 小規模でも良いので、文系の学部を中心とした公立(市立)大学を作る。大学には全国各地から若者が集まるし、大都市で学んだ教授も集まるので、文化的な多様性が生まれる。加えて、大学図書館を設置し、司書を配置することにより、公立図書館ではできないサービスを実現できる。

Ⅱ大型書店を誘致する

 ジュンク堂MARUZENのような、大型書店を市街地の中心部に誘致する。もちろんテナント料などは税金で助成する。一般書店と大型書店の大きな違いは、座って本が読めるということ。これによって、大型書店は居心地の良い場所となっている。これがあるのとないのとでは全然違う。

結論

 結局、文化を作るには、大都市から人と知恵の両方を持ち込んで、継続的に回る仕組みを作る必要がある。本格的に取り組むのなら、上の二つの案ぐらいの出費は覚悟しなければならない。八戸ブックセンターの運営に税金が投入されることに批判的な意見もあるが、本当に豊かな文化都市を目指すなら、その程度の額では全く足りないくらいなのである。

 八戸ブックセンターに関しては正直なところ、あまり改善案も思いつかない。というのも、芸術一般ならやれることは多いのかもしれないが、本に関係ある事に限定するとなると、やれることはかなり限られる。本によって社会を豊かにするには、それなりに本を必要とする人たちがいなければいけないし、本を必要とする人を作り出すにはもっと大がかりな変革が必要だと思う。それこそ大学を作るぐらいでなければ、根本的に人々の心の豊かさは変わらないだろう。

 そういう意味で八戸ブックセンターという試みは筋が悪いと思うのだが、いかがなものだろうか?今後に期待したい。