女による、女のための「わたモテ」

 「わたモテ」と言っても、以前匿名ダイアリーで批判されたほうの「わたモテ」(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)ではない。(匿名ダイアリーでは「私モテ」と略されてるけど…)

anond.hatelabo.jp

 現在、アニメが放映されている方のわたモテである。正式には『私がモテてどうすんだ』というタイトルで、こちらは「私モテ」と略すらしい。以下に第1話の詳細が記載してある。

anicobin.ldblog.jp

 匿名ダイアリーの内容については、はてなでちょっとした話題になったので覚えている人も多いのではないか。

 要約すれると、わたモテの主人公であるもこっちは喪男による妄想の産物、つまり喪男を女体化したものであって、現実のモテない女とは違う。現実の喪女は、タイトルのように、自分の不幸を社会のせいにしたりはしない。不幸を社会のせいにしたがるのはもっぱら男で、それを女に代弁させたがる作者やその手の男性作家はみんな醜い、という主張である。

 「私モテ」の作者がこの匿名ダイアリーを見た可能性はほとんどないだろうが、「私モテ」の描く主人公の性格が、この匿名ダイアリーの書き手の主張に沿った内容になっている点は興味深い。つまり「わたモテ」が男による、男のためのストーリーであるのとは対照的に、「私モテ」は女による、女のためのストーリーになっている。「私モテ」のあらすじはについては、公式サイトに載っている。

「男の子同士が仲良くしているのを見ているのが何より大好き!」な高校2年生・芹沼花依は、有り余る妄想力で"カップリング"を楽しみながら、今日も親友のあーちゃんと腐女子トークに花を咲かせる。そんなある日、大好きなアニメのキャラクターが死んだショックで体重が激減し、誰もが振り返る美少女に変身!? それをきっかけに校内の美少年4人からデートに誘われて…。(私がモテてどうすんだ 公式ホームページ|TBSテレビ

  以上のように、ぽっちゃりで、メガネをかけていて、腐女子の主人公がある日突然激ヤセし、(腐女子にも関わらず)複数の男性から好意を寄せられるまでになる、というストーリーである。

 ポイントは主人公がモテる理由に何の飛躍も無いことだと思う。ぽっちゃりしていたうえにメガネをかけていたから気づかれなかったのかもしれないが、主人公はもともと美人だったし、性格も楽天的で努力家、さらにはコミュ力もあるというように、そもそものポテンシャルがメチャクチャ高かった。だから痩せて容姿がまともになれば男たちが言い寄ってくるのは当然で、何の不思議もない。

 この点は匿名ダイアリーの内容とも整合する。

喪女は、自分がブスでコミュ障だからもてないということをよく理解している。
もてたいならブスとコミュ障を治すしかないことも理解している。
微妙にブス、微妙にコミュ障くらいだったら化粧や髪型や人とかかわる訓練で改善できたりする。
しかし破滅的なブス、絶望的なコミュ障の場合は、諦めざるを得ない場合が多い。
それでも喪女は社会を呪わない。現実から目を背けて人のせいにして叩いたりしない。

  主人公は破滅的なブスでも、絶望的なコミュ症でもなく、激ヤセしてそれなりの美人になり、結果として喪女からリア充に成り上がった。意図せずとはいえ、主人公は自分が変化することによって、他人の評価を勝ち取ることに成功したのである。だから、このアニメは、匿名ダイアリーの主張を真に受けるなら、非常に喪女的な感性によって構成されたアニメと言える。

 そういうわけで、『私がモテてどうすんだ』は、「わたモテ」に対して不満を持っていた方々が、安心して見られるような作品になっていると思います。

 

私がモテてどうすんだ(1) (別冊フレンドコミックス)

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