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笑いの感性の変化を調べるには

 『志村けんのバカ殿様』を見て、笑えるかどうかチェックしてみるのがいいかもしれない。『志村けんのバカ殿様』を見て、子どもの頃は、あんなに笑っていたのに、今は全然笑えないという人は、おそらく笑いの感性が変化している。昔笑えて今も笑えるという人は、笑いの感性が変わっていない。

 今のお笑いについて昔よりおもしろくなくなったという人は一度よく考えてもらいたい。それはお笑いが劣化したのではなく、あなた自身の感性が変化したことが原因かもしれないからだ。

 『志村けんのバカ殿様』という番組は、志村けんのポテンシャルを最大限に引き出す方向性で作られている。老若男女だれでも理解できるギャグが中心で、下ネタの割合が高いという特徴も長年変わっていない。エロ要素は年を重ねるごとに薄まっているものの、それ以外の笑いのセンスを変えずにここまでやってこれたというのは驚異的である。

 実際のところ、私は昔ほど、志村けんのギャグを笑えなくなっている。『志村けんのバカ殿様』を見ると、今の自分にとっては、分かりやすいギャグが必ずしもおもしろくないということに気づく。むしろある種の文脈を踏まえたギャグ、狭い範囲にしか通じないあるあるネタのほうがおもしろいと感じる。

 こういう傾向は恐らく最近の漫才やバラエティの笑いになれたことに原因があるんだろう。その時代の笑いには流行があって、私たちの笑いの感性は、否応なくそれに影響されてしまう。私たちは、お笑い全体がおもしろくなったとか、おもしろくなくなったとか、その時代の感性に従って判断してしまう傾向がある。

 だけど本当はそんなことなんてありえない。個別の芸人にはやりすたりはあるのかもしれないけど、お笑い全体が劣化したりすることはまずない。劣化していると感じたなら『志村けんのバカ殿様』を見てほしい。昔おもしろく感じられたのに、今おもしろく感じられなかったら、それはお笑い全体ではなく、あなた自身の感性が変化している証拠である。