伊集院光の指摘するNHKのダメな部分に一番忠実だった椎名林檎の2016紅白パフォーマンス

 2016年の紅白に出場した椎名林檎に関しては、曲発表前にが歌う曲を予想したり、曲が発表されてからはその選曲に対する疑問を書いたりしていた。そして目的の紅白を実際に見ても、そういった疑問は解消されず、「地味、つまらない」ぐらいのざっくりした感想しか湧いてこなかった。だけど、ホットエントリー入りしている他ブログの記事を読んで、もうちょっと深く考察してみようと思って、この記事を書くことにした。

 

 該当記事は次のリンクから読める。

www.ru-put.xyz

 この記事で言わんとしてることはなんとなく分かるけど、この文章を読んだところであのパフォーマンスについての私の否定的な評価は覆りそうにもない。

 NHKらしくない番組が作りたい?

 今回のパフォーマンスの何がダメかっていうのは、伊集院光がラジオの中で全部言ってくれている。簡単に言うと、椎名林檎は「NHKらしくない番組が作りたいんです」っていうNHK側の要求に一番忠実に応えてしまっていると感じるからだ。それゆえ私は今回の椎名林檎については全く評価していない。

 

 次の文章は伊集院光がラジオの中で、今年の紅白について語った内容である。

 

紅白見ないんで今年がどうだとか分かんないんですけど、僕NHKで仕事をするにあたって一番嫌いな言葉ってのがあって、NHK内で発せられる一番嫌いな言葉は、「私、NHKらしくない番組が作りたいんですよ」っていう言葉で、それを聞くと、もうその時点ですげぇやる気がなくなるっていう(笑)

 

こっち側としては、NHKらしくない番組をやりたいなら、NHKじゃないところで仕事をしてるので、そっち(他局)でいいですと思うわけ。こっちはNHKを尊敬してるし大好きだから、NHKから番組のオファーが来るから嬉しくてそれをやるわけで。

 

それを「NHKらしくない番組をやりたいんです」っていう「ブッ飛んだ、面白いことがやりたいんですよ!」っていう匂いが超する紅白だった!(笑)

 

「タモさんが観客席にたどり着かないって超面白いでしょ?」っていう(笑)「マツコとタモさんがNHKの愚痴を言いながら、結果着かないって普通NHKじゃ絶対にやらないでしょ?」って匂いが、ある意味NHKのスベるケースの一番中央にあるんじゃねぇかって思うんですよ。

 

ゴジラなんかも、「NHKのアナウンサーさんが本当にゴジラが来ちゃってるみたいな感じでドタバタするのってNHKの発想じゃないでしょ?」っていうNHKの発想だから(笑)

 (「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ)1月2日放送分より)

 

 NHKの「NHKらしさ」を捨てて勝負している、というアピールに一番貢献していたのが他でもない椎名林檎であった。顰蹙を買うか買わないかのギリギリを攻めていると思わせるには十分だけど、一線だけは絶対に超えない。そういう安全に踏み外す感じが、今回のパフォーマンスでは際立っていた思う。

 

 文脈は読めるけど、適度に外すこともできるよ。オリンピック閉会式の引継ぎ式という一大イベントを終えた直後だから、そういうイメージを作りたい椎名林檎NHKの思惑が合致したということだろうけど、それって視聴者を置いてきぼりにしてない?という印象はぬぐえない。

 

 椎名林檎のいちファンから見ると、重すぎる荷物を背負おうとしているように、あるいは背負わされているように見えるので、「本当にその方向に進むのは正しいの?」と心配になるのだが、それはこっちの都合なので、ぐちぐち言っても仕方ないのかもしれない。

 

 ただ、こっちの都合をさらに言わせてもらえるならば、昨年、一昨年の紅白で披露したぐらいの、ものすごくポップなものと尖った部分が同居している、意識高めのパフォーマンスをする人たち、ぐらいの世間から評価がちょうどいいような気がする。

 

 国民的ーという形容詞がロクなものでないことは、昨年一年間で十分証明されたと思うので、それをわざわざ引き受ける必要などないのでは?と個人的には思う。

 

音楽関係のエントリー

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Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) の『 助演男優賞』のコレじゃない感について

 フリースタイルダンジョンなどで活躍するR-指定とその相方のDJ松永のユニット、、Creepy NutsのMVについては、過去2作品は非常に楽しく見させてもらったのだけど、今回の新曲のMVは乗れないなぁと感じてしまった。

 新曲『助演男優賞』のMVはYoutubeで公開されているので誰でも見ることができる。

www.youtube.com

 このMVを見て、素晴らしいと感じる人もいると思う。実際、一流のスタッフを集め、知恵を振り絞り、それなりの金と労力をかけた結果なのだろう。だが、それでもやはり、このMVについては手放しに褒められない何かがあると感じたので、その理由についてアレコレ考えてみた。

Creepy Nutsの過去のMVを振り返る

 今回のMV『 助演男優賞』について検証する前にまず、過去のCreepy NutsのMVについて振り返りたい。こちらもYoutubeで見ることができる。

『みんなちがって、みんないい。』

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / みんなちがって、みんないい。【MV】 - YouTube

 『みんなちがって、みんないい。』は、ラッパーを取り巻く状況を揶揄したMVである。このYoutubeを初めてみた時は、若いのにこんな感性を持っているラッパーがいるのかと、心底驚かされたものだ。

 このMVの何がそんなに優れているのかというと、第一にこの曲には絶対的なオリジナリティーがある。ラップ業界の内幕という一部の人間しか知りえないことをネタに、彼らなりの解釈を加えて描いているので、他人には決して真似できないMVに仕上がっている。

  第二にこのMVが優れているのは、コアなラップファンとラップについて全く知識が無いような層のどちらにも届く内容になっていることである。例えば『みんなちがって、みんないい。』では、ファンモンという紅白出場経験もあるようなグループと、呂布カルマのようなニッチなラップファンにしか分からないラッパーをどちらも取り上げている。だから、間口が広く、かつ奥が深い曲に仕上がっている。

 第三に単純にMVとして面白い。R-指定には、ラッパーを形態模写するセンスがあるし、歌詞に関してもストレートに他のラッパーを批判するのではなく、彼らが置かれている状況について考えさせるような構造の曲になっている。

 以上のような点で私は『みんなちがって、みんないい。』は良いと思った。

『合法的トビ方ノススメ』

 Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / 合法的トビ方ノススメ 【MV】 Clean Ver. - YouTube

 続く『合法的トビ方ノススメ』にに関しても好意的に受け取っていて、コレは歌詞の内容の方は大したことは無くて、要約すると「クスリよりも音楽の方が楽しいよね」とか「音楽こそが自分たちにとっての最高のドラッグなんだ」みたいなことを言ってる。それ自体は凡庸なんだけど、MVの出来とトラックが非常によく出来ていて、女子高生がドラッグや援交に手を染めようとしているシーンとR-指定とDJ松永がその場に現れて歌い踊るシーンとで構成されているのだが、前者のシーンの質が非常に高い。これは解説するまでもなく見てもらうのが一番早いだろう。

 

 そういうわけで、『みんなちがって、みんないい。』、『合法的トビ方ノススメ』について振り返ったので、問題の『助演男優賞』について語っていく。

助演男優賞

 このMVが他の2つのMVと大きく違う所は、物語性が強いということだ。簡単にストーリーを追っていくと、まずうだつが上がらないCreepy Nutsの前に、敏腕女性プロデューサーが現れ、イケメン二人を彼らの代役にしたうえで、様々なメディア戦略を駆使してプロモーション活動を展開する。その結果、Creepy Nutsは絶大な人気を獲得する。もちろん本物のR-指定とDJ松永は代役の陰に隠れて辛酸を舐めることに。しかし代役の二人のスキャンダルが発覚したことで、人気は一気に凋落し、本物のCreepy Nutsはその責任を取らされ、所属する会社を追い出される、というものである。

 まず、このストーリーが滅茶苦茶つまらないのが致命的である。最終的に代役が失敗するという何のひねりも無い、勧善懲悪的な展開になっており、「え!?結局この結末なの?」という残尿感ばかり残る。

 そして、扱っている題材も芸能人の不倫や薬物問題といった、俗なものばかりで、彼ら自身の視点が全く反映されていないことも問題だ。芸能人のスキャンダルをこき下ろすことなら一般人でもできるわけで、わざわざ彼らがそのレベルに降りてきて、MVを見る人間の留飲を下げさせる必要などあるだろうか。ここには、『みんなちがって、みんないい。』にあるようなオリジナリティがないのである。

 そのうえトラックにも、過去2作品に感じられたようなこだわりが感じられない。このMVでは、トラックがストーリを語るための道具のような扱いで、トラックそれ自体の魅力が決定的に欠けている。

 

まとめ

 そういうわけで、私はこのCreepy Nutsの新曲『 助演男優賞』のMVに対して「コレジャナイ…」と思ってしまうわけだ。結局、私がCreepy Nutsに感じていた魅力というものは、一部の人間にしか分からないハイコンテクストなものと、誰ても分かるローコンテクストなものを一つの曲の中に両立させるセンスの良さ、これに魅かれていたわけである。

 でも、今回の『 助演男優賞』のMVは、大衆的なもの、ローコンテクストなものばかり目立って、ハイコンテクストなものがすっかり消え失せているように感じられる。それは結局、『みんなちがって、みんないい。』で彼らが揶揄していたファンモン(FUNKY MONKEY BABYS)的な感性に非常に近いと思うのだが、そのことについてCreepy Nutsの2人はどれだけ自覚的なのか。

 ネタ切れということもあると思うし、もっと一般受けするものを作りたいという考えもあるのかもしれないが、『助演男優賞』みたいな曲なら、別に他のアーティストが作ってもいいわけで、個人的には過去2作ほどの魅力を感じないというのが私の結論である。

  で、ここまで書いておいてなんだけど、Creepy Nutsを見限ったとかそういうことでは全然ない。期待値が高いからこその批判なわけで、彼らには『みんなちがって、みんないい。』と『合法的トビ方ノススメ』を超える作品が作れるだけのポテンシャルがあることは間違いない。だから、安易に「あるある的感性」に訴えるのではなく、「なんだか自分にはよく分からない。だけど凄い!」と思わせるような作品を作ってほしい。私が望むのはそれだけである。

 

助演男優賞

助演男優賞

 

 

音楽関係について語った記事

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2016年第67回紅白歌合戦レビュー MVPはRADWIMPS 予想外の収穫は乃木坂46

f:id:motsurima:20161204194023j:plain2016年の第67回紅白歌合戦に出ていた歌手の曲を評価してみた。

PVとかライブの映像を見て出来を予想したのがこちら。
2016年紅白の曲の中で聞いたことが無い曲を聞いてみた-桐谷健太、五木ひろし、AI、AAA、miwa、E-girls - ドリップ式映画・資格日記

2016年紅白の曲の中で聞いたことが無い曲を聞いてみた-Sexy Zone、市川由紀乃、RADIO FISH、西野カナ 、SEKAI NO OWARI、水森かおり - ドリップ式映画・資格日記

【2016紅白】聞いたことが無い曲を聞いてみた - ドリップ式映画・資格日記

2016年紅白レビュー

※残念ながら関ジャニPUFFYを見逃した。

襷坂46
口パクか本当に歌っているのか分からない歌い方。PVを見た後だと驚きが無い。

三山ひろし
大谷見たいな顔してた。けん玉パフォーマンスの必要性が分からない。

山内恵介
けん玉パフォーマンスのあとだと、乃木坂が踊っているだけでも大分マシに見える。

miwa
必死に歌っているところが良かったのに、なんだかニコニコしてていつも通りという感じ。

セクシーゾーン
安定していたけど、それ以上のものはなかった。

天童よしみ
パフォーマンスとして良かった。

セカイノオワリ
PVに近い演出のわりにはよかった。曲は地味すぎ。

市川由紀乃
歌詞が分かりやすい。

三代目
パフォーマンスとしては派手で良かった。曲は意味不明。

香西かおり
真田丸と結びつける必要はない。バイオリンは良いのに。曲がスローテンポすぎて、歌えていない。橋本マナミが邪魔、

椎名林檎
色んな力が働いていそう。もっと普通に盛り上がれる曲をもっと普通の場所で歌って欲しかった。

福田こうへい
相変わらず用心棒顔。声が出てる。

絢香
スモークの量、失敗した?今さら感。

郷ひろみ
郷ひろみを目立たせたいのか、土屋太凰を目立たせたいのか、良く分からない。

V6
出演した理由がよく分からない

水森かおり
豪華な衣装があまりあっていない。

いきものがかり
なぜこの曲?とは思うが、割りと良かった。茶髪の髪の毛がヅラにみえる。

ゆず
この曲調でこの曲を歌わなきゃなら無い理由がない。

RADWINPS
特別なことをしなくても盛り上がるね。

乃木坂
かわいい子の顔をアップで撮る方向性が成功してた。曲とかダンスにこだわってなくて良かった。

福山雅治
特に何も無かった

島津亜矢
歌唱力凄い。でも清々しく歌いすぎな気もする。

RADIOFISH
バカらしくて良かった。

西野カナ
歌唱力はあるけど、やっぱり過去のものと比較して曲のインパクトが弱い。

桐谷健太
泣かせるために作りました。そういう制作意図が透けて見える。

AI
同上。ひどい歌詞。

AKB48
好きな人は盛り上がれるんだろうな。

五木ひろし
定番という感じ。

KinKi Kids
良い曲なのに歌がイマイチ。特に光一が酷いが剛も良くはない。

Perfume
目に優しくないけど、パフォーマンスと演出は合ってたと思う。

星野源
ダンサーが良すぎて本人がちょっと霞んでた感じが…

大竹しのぶ
ある種のパフォーマンスつきだったから、予想していたよりも大分良かった。

坂本冬美
橋本マナミより良かったけど、あまり印象に残らない演出だった。

TOKIO
椎名林檎と比べて、手を抜きすぎじゃ…

松田聖子
無難。

XJAPAN
高音がキツい。

高橋真梨子
意味深な歌詞。歌唱力が半端じゃない。

THE YELLOW MONKEY
うーん、ちょっとソフトに歌い過ぎな感じが。声って衰えるんだなぁということを改めて痛感させられた。

氷川きよし
面白くない曲だなあ。最後は盛り上がったけど。


宇多田ヒカル
これなら録画したものでも構わないのでは。

石川さゆり
Youtubeで気軽に過去の映像が見られるのでそれとの比較になってしまうのがキツイ。


最後にメドレーって…。

総評

 今回の紅白全体を振り返ってみる。まず司会が良くなかった。有村架純は台本に書いてあることをそのまま喋っているようで、自然なコメントができてなかったし、相葉も進行に気を取られすぎてうまく会話出来ていなかったように見えた。特に前半がダメだったが、後半になってから緊張が解けたのか徐々に良くなっていった。

 つぎにパフォーマンスについては、似たような演出が多かったと思う。特に歌手と女性ダンサーという組み合わせが多かったけれど、上手くハマっていたものはなかったし、もっと違った演出が見たかった。また椎名林檎TOKIOが両方とも都庁を舞台にしていたが、どちらかというとTOKIOの方が手抜き感が強かった。

 個人的に注目していたのは、椎名林檎THE YELLOW MONKEYだったが、どちらも選曲ミスだったとおもう。詳しくは以下のエントリを参照してほしい。
紅白でイエモンに歌ってほしいけど、諸々の事情でたぶん無理な曲BEST5 - ドリップ式映画・資格日記
2016年の紅白で聞きたい椎名林檎の曲5選 - ドリップ式映画・資格日記

 
 今回個人的にMVPだと思ったのはRADWIMPSである。演出こそバックスクリーンに『君の名は』のアニメを映し出すという淡白なものだったが、曲自体に勢いがあったのでそのままで十分だった。

 そして自分が予想していたよりもずっと良かったのは乃木坂46で、演出では今年の紅白ベストだったと思う。歌をいかに聞かせるか、ダンスをいかに美しく見せるかといった執着は全くなく、メンバーの顔をいかに美しく見せるかということにエネルギーを注ぎ込んだという点は英断としか言えない。そして、それは見事成功していた。

2016年の紅白。私の結論

 全体としては、イマイチな紅白だったと思う。イエモンとかX-JAPANは、今年ヒットした歌手を押しのけて出場した割には、歌唱力に難があって盛り上がらなかった。来年からは、多少知名度が足りなくてもその年の旬の歌手を読んでほしい。そういえばフリースタイルラップとか盛り上がっているわりに、紅白には全然出てなかった。ピコ太郎とか渡辺直美といったお笑い芸人中心の紅白だったと思う。その割にみんな滑っていたがが、それはあの場が半分以上悪いのであって、芸人自信ではどうしようもないことなので、ちょっとかわいそうだと思った。アーティスト以外で一番良かったのはぺこ&りゅうちぇるだったと思う。

行政主導で文化は生み出せるのか?八戸ブックセンターの試みと問題点

 2016年12月4日に青森県八戸市で八戸ブックセンターという施設がオープンした。この、露骨に八重洲ブックセンターパクった意識したような名前を持つこの書店の最大の特徴は、その運営主体が八戸市という自治体だということである。

hachinohe.keizai.biz

運営コンセプト

公式HP(八戸ブックセンター)によると、この施設の運営コンセプトは

八戸に「本好き」を増やし

八戸を「本のまち」にするための

あたらしい「本のある暮らしの拠点」

 とのことである。

方針

具体的には

方針1 本を「読む人」を増やす

方針2 本を「書く人」を増やす

方針3 本で「まち」を盛り上げる

という3つの方針がある。

企画・イベント

実際にやっていることは

①セレクトブックストア
②カンヅメブース
③読書会ルーム

の3つが主のようだ。その内容は

①専門家がおすすめの本をチョイスしてポップなどをつけて並べる

②作家になりたい人が創作活動に集中できるためのスペースを提供する

③ブックセンター主催、または市民の依頼によって読書会を開催する

ということだ。

感想

 率直に言って、なぜ地方自治体がこのような施設の運営に税金を投入しなければならないのか分からない。既存の図書館や教育機関ではダメなのか。民間ではその役目を果たせないのか。現状では、そういった必要性への疑問にうまく応えられていないように見える。

 実際に行っていることを見ても、①のセレクトブックストアは普通、民間の書店が通常業務の一環としてやっていることだ。②に関して、作家活動に公の支援が必要だという話も聞かないし、支援したからと言って作家がぼこぼこ生まれるわけじゃないだろう。③のいわゆる「読み聞かせ」に関しては、普通自治体の図書館がやっていることで、わざわざここでやらなきゃいけない理由はない。

 つまり、現状を見る限りでは、八戸ブックセンターを「公」が運営しなければならないような道理はどこにもないのである。

  一方で、この手の施設が必要な理由は痛いほど理解できる。なぜなら八戸には他の都市と比較して、文化資源が圧倒的に足りていないからだ。つまり八戸市は文化的に非常に貧しい都市だからである。

文化的に貧しい都市、八戸の特徴

八戸市が文化的に貧しい理由はいくつかある

  1. 県庁所在地ではない
  2. 歴史的な積み重ねが少ない
  3. 公立大学が存在しない
  4. 大型書店が存在しない

なぜ、八戸は文化的に貧しいのか。それは近隣の都市(青森、弘前、盛岡)と比較してみればよくわかる。

①県庁所在地ではない

 まず基本的なところから始めると、八戸は県庁所在地ではない。青森県の県庁所在地は、もちろん青森市である。だから県の主要な機関は青森市に集中していて、国の地方機関も少ない。加えて、テレビ局が無いのもでかい。

②歴史的な積み重ねが少ない

 弘前津軽藩の城下町として有名な一方、八戸も八戸藩という藩の城下町であったが、その規模は小さく、弘前城のような有名な史跡も残っていない。歴史的な有名人も太宰治などを産んだ旧津軽藩の地域よりも格が落ちる。

公立大学が存在しない

 若者がいないから、新しい文化が生まれる余地が無いし、大学が無いから専門書の売り上げも少ない。あと大学図書館のような施設が優秀な司書を雇うことによって得られる恩恵も受けられない。

④大型書店が存在しない

 ジュンク堂丸善のような大型書店が存在しないので、専門書を購入する必要性があってもAmazonなどを使って取り寄せることが必要になる。

 

 以上4つの理由から、八戸は文化的に貧しい都市となっている。文化資源の貧しい都市からは若者が逃げていく。若者が逃げていく都市は今後衰退していくのみである。だから文化的に豊かな都市を目指すという方針は圧倒的に正しい

 だが八戸ブックセンターのやり方を見ても、その方法が目的にどれだけ貢献しているかを考えると否定的に語らざるを得ない。結局この方法では文化は生まれないだろう。

 

文化的に豊かな都市を作る方法

 実現可能性を無視して、私が文化的に豊かな都市を作る方法を考えると以下のようになる。

公立大学を作る

 小規模でも良いので、文系の学部を中心とした公立(市立)大学を作る。大学には全国各地から若者が集まるし、大都市で学んだ教授も集まるので、文化的な多様性が生まれる。加えて、大学図書館を設置し、司書を配置することにより、公立図書館ではできないサービスを実現できる。

Ⅱ大型書店を誘致する

 ジュンク堂MARUZENのような、大型書店を市街地の中心部に誘致する。もちろんテナント料などは税金で助成する。一般書店と大型書店の大きな違いは、座って本が読めるということ。これによって、大型書店は居心地の良い場所となっている。これがあるのとないのとでは全然違う。

結論

 結局、文化を作るには、大都市から人と知恵の両方を持ち込んで、継続的に回る仕組みを作る必要がある。本格的に取り組むのなら、上の二つの案ぐらいの出費は覚悟しなければならない。八戸ブックセンターの運営に税金が投入されることに批判的な意見もあるが、本当に豊かな文化都市を目指すなら、その程度の額では全く足りないくらいなのである。

 八戸ブックセンターに関しては正直なところ、あまり改善案も思いつかない。というのも、芸術一般ならやれることは多いのかもしれないが、本に関係ある事に限定するとなると、やれることはかなり限られる。本によって社会を豊かにするには、それなりに本を必要とする人たちがいなければいけないし、本を必要とする人を作り出すにはもっと大がかりな変革が必要だと思う。それこそ大学を作るぐらいでなければ、根本的に人々の心の豊かさは変わらないだろう。

 そういう意味で八戸ブックセンターという試みは筋が悪いと思うのだが、いかがなものだろうか?今後に期待したい。

【2016紅白】聞いたことが無い曲を聞いてみた

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高橋真梨子『ごめんね…』評価C

『桃色吐息』、『for you』、『はがゆい唇』など誰もが聞いたことがある高橋真梨子の曲の中では『ごめんね…』は良い曲だとは思うは少々地味ではある。今年のヒット曲ではないのに、この選曲というのはちょっと無いかなぁ、と思う。高橋真梨子は年齢の割に声は安定しているし、良い歌手だと思うがイマイチこの曲では盛り上がらないような…

 

関ジャニ∞ 「ズッコケ男道」評価B

関ジャニ∞はみんな個性があるし、必要以上にかっこつけてないのが良い。 「ズッコケ男道」はずいぶん昔に聞いた曲だけど、今聞いても良い曲だと思う。今回は、ゴールデン・ボンバーがいないから、彼らが賑やかし枠みたいな感じだろうけど、ぴったりの曲だと思う。

 

欅坂46サイレントマジョリティー』評価C

歌詞が小難しい割に、歌唱力が無いから、歌っているというより、歌わされている感が強い。PV時よりも相当成長していなければ、歌詞に見合ったパフォーマンスは無理だろう。曲自体は今年のAKB系列の中では良い方だと思う。

 

三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE 『Welcome to TOKYO』評価E

彼らに東京や日本を代表してもらいたいと考えている人がどれだけいるのか。

 

乃木坂46 『サヨナラの意味』評価D

卒業シーズンの定番にしたかったけど、イマイチ当たらなかったという感じの曲。あまり印象に残るようなものが無い。

 

郷ひろみ『言えないよ』評価B

郷ひろみは基本的に歌が下手なので、『2億4千万の瞳』みたいな勢いのある曲じゃないと聞くに堪えないのだが、この曲には妙な魅力があって最後まで聞ける。

 

松田聖子『薔薇のように咲いて 桜のように散って』評価C

松田聖子は前回出場したとき聞いて、だいぶひどいなと思った。だけど、今回の曲はYoshikiが作曲したということで、曲自体の質は高い。あとはライブで松田聖子がどれだけのパフォーマンスを発揮できるかが問題。

 

福田こうへい東京五輪温度』評価C

怪しいセールスマンのような風貌をしている。あるいは時代劇で用心棒として雇われる剣豪みたいな見た目。演歌のうまさの基準がよく分からないのだが、この人はうまいのかよく分からない。声にあまり特徴が無いので、個人的にあまり魅力を感じないのだが。

 

大竹しのぶ『愛の讃歌』評価D

Youtubeで見る限りは、結構うまいが、別にこの人である必要性が全くない。それこそ和田アキ子が歌ったって良いし、美輪明宏だっていいのだから、そこに疑問点は残る。

 

三山たかし『四万十川』評価C

福田こうへいよりはずっと、親しみやすい顔と声をしている。曲自体は良くも悪くもない特徴のない曲だと思う。男性の演歌歌手は、女性に比べて地味な曲ばかりな気がするのだがどうしてなんだろうか。

 

香西かおり『すき』評価D

曲を聞いたけど、本当にこの曲で良いの?って思った。

2016年紅白の曲の中で聞いたことが無い曲を聞いてみた-Sexy Zone、市川由紀乃、RADIO FISH、西野カナ 、SEKAI NO OWARI、水森かおり

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主観的にA~Eの5段階で評価。あくまで主観的。

Sexy Zone『よびすて』評価A

歌が上手い。ジャニーズと言えば、ダンスはうまいが歌はイマイチというグループが多い中で、このグループは歌っているすべてのメンバーがうまかった。

 

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2016年紅白の曲の中で聞いたことが無い曲を聞いてみた-桐谷健太、五木ひろし、AI、AAA、miwa、E-girls

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主観的にA~Eの5段階で評価。あくまで主観的。

桐谷健太『海の声』評価D

BEGINの人が作曲をやっているとのことで、確かにBEGINっぽいのだけど、BEGINよりもずっと歌詞に特徴が無いというか、飲み込みやすい歌詞になっていて、それをどう評価するかだと思う。BEGIN並みに、アクの強い感じだったらCMにも使われたなかった可能性もあるし仕方ない部分もある。残念ながら紅白で普通に歌っても印象には残らないだろう。

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